リースの決意

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  「リース、落ち着け。俺は大丈夫だから……」 「大丈夫なわけないじゃない!」 なだめようとするアルの言葉を、リースが一蹴する。 「アル、何にも悪く無かったんじゃない……。昔から凄く頑張ってたのに……それでも魔法が使えなくて……皆に馬鹿にされて……。お父さんやお母さんにも見捨てられて……。全部、全部あの子のせいだったんじゃない!」 まくし立てるリースに、アルも思わず無言になる。 そう、確かに今日は初めて魔法を使えた喜びの方が大きく、怒りを忘れていたが、元はと言えば、今までの辛い人生は全てシェリスのせいなのだ。 そう考えると、忘れていた怒りが沸々と沸き上がってくるものだが、今は不思議と安らかな気持ちでいられた。 目の前で代わりに泣き、代わりに怒ってくれる。 そんなリースの存在が、アルの心に不思議な安堵を与えていたのだ。 「アル……もうあんな子に頼ること無いよ。私、アルが普通に魔法を使えるようになる方法を考えるから。だからそれまでは……」 リースが頬を赤らめつつ、少し俯き、わざとアルから目を逸らす。 そしてそっとアルの手をとり、自分の胸へと導いた。 ふにゅ……。 「ちょっ……リース!?」 シェリスよりは小振りであるが、それでも柔らかなリースの胸の感触が、アルの右手に伝わる。 「そ、それまでは、こうして……わ、私から魔力を吸えばいいよ……!」 そして当のリースは、リンゴのように真っ赤に染まった顔で、絞り出すような声をあげるのだった。  
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