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「リ、リース……」
アルは思わず、リースを凝視する。
やはり恥ずかしいのか、はたまた怖いのか。
顔を真っ赤にしたリースは、瞳を固く閉じ、唇をきゅっとつぐんでいた。
柔らかな部分に触れた右手に、リースの鼓動が伝わってくる。
その鼓動は、放って置けばドキドキし過ぎて死んでしまうのでは無いか等と突拍子も無い不安すら抱いてしまうほどに、早鐘を打ち鳴らしていた。
アルの右手を導いたリースの両手が、小刻みに震える。
一呼吸置いて、アルはそんなリースの肩をポンッと叩いた。
「ありがとうな、リース。でも、それはやめておくよ。俺の代わりにお前が魔法を使えなくなったりしたら嫌だからな」
「そ、そんなのっ……!」
〝大丈夫だよ〟と、続けようとして、リースはその言葉を飲み込んだ。
魔力が無い辛さを知っているアルのことだ。
そんな発言をすれば、アルに怒られてしまうだろう。
そんな事を考えるリースの耳に、ふと、バツの悪そうなアルの声が滑り込んできた。
「あ、あと……胸じゃなくても魔力は吸えるからな?」
「ええええ――ッ!」
ゴキッ!
「ギャオオオ――ッ!」
すっかり勘違いしていたらしいリースが、瞬時にアルの腕を引き離す。
その拍子に、アルの腕の間接があり得ない方向に曲がり、アルは大きな悲鳴をあげるのだった。
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