火花散る夕暮れ

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  「アル……まさか私に愛撫しながら別の女の事を考えてたんじゃないでしょうね?」 シェリスの瞳がギラリと光る。アルを掴む腕に力がこもり、輝く爪が皮膚に食い込んだ。 「あ……ご、ごめ……」 アルの声はもはや言葉になっていなかった。 今までの底抜けに明るいシェリスの表情からは想像も出来ないほどに冷たく輝く瞳。 そこから放たれる憎悪は、アルに〝死〟を意識させるに充分だった。 「……アル」 ゆらりとシェリスが立ち上がり、その髪を逆立たせる。その身体から膨大な魔力が溢れ出している証だった。 「ひ……ぃっ……」 恐怖のあまり、椅子から転げ落ちて腰を抜かすアルを、冷たく見つめるシェリス。 先ほど聞いた、シェリスを怒らせたという二人の生徒の末路が頭をよぎる。 少しの失言だけで、あんな仕打ちを受けたのだ。 だとすれば、今自分がやらかしてしまった失敗への、シェリスからの沙汰はいかなるものか。 それを考えると、アルの震えは止まらなかった。  
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