火花散る夕暮れ

8/8
前へ
/38ページ
次へ
  ――どれほど時が経っただろうか。 アルにとっては永遠とも感じた恐怖の時間は、シェリスの大きなため息によって終わりを告げた。 「はぁ……。仕方ないわね。これでおあいこ、だよ」 「……えっ?」 溢れだした魔力を押し込め、いつもの口調で紡がれた言葉に、アルが小さく反応した。 「だぁかぁらぁ、おあいこにしたげるって言ってんの! 本当は殺したいほどムカついたけど、私のせいでアルに迷惑かけたのも事実だからね。今すぐ私を好きになれってのはさすがに無理かなって。だから、今回は聞かなかったことにしてあげるわよ」 シェリスの言葉に、アルはホッとしたように息を吐いた。 「……でも、次はないからね?」 「……あ、ああ」 ギロリと睨むシェリスに、もう一度戦慄するアル。 「今日は気分悪いから、一人で寝るわ。部屋に入ってきたら殺すから。……じゃ、おやすみー♪」 ヒラヒラと手をふるシェリスの姿を、アルは青ざめたまま見送るのだった。  
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

154人が本棚に入れています
本棚に追加