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「全く、あいつも人騒がせな奴だな」
「ねー」
シェリスとアルは辺りを見回しながら、連れ立って並木道を歩いていた。
昼休みも終わりに近付き、もうすぐ講義の時間になる。
レイムやカインなどであれば講義をサボっても不思議では無いが、リースはクラス委員という立場からも分かるように、こういう事に関してはしっかりしている方だ。
講義をサボってどこかへ消えるなど有り得ない。
そう考えると、初めは楽観視していたアルも段々と不安になっていくのだった。
「よっ、ご両人! 講義サボってどこ行くの?」
その時、アルの耳に聞き覚えのある声が飛び込んでくる。
声の方に振り向けば、木陰に設置された木のベンチに腰掛けながら本を読む、カインの姿があった。
「ああ、リースを探してるんだよ。お前見かけてないか?」
アルの問い掛けに、カインが大きく頷いた。
「ああ、リースちゃんならさっき体育館の方へ行ったのを見たぜ。ブラールの奴に付きまとわれてうざがってたみたいだけど……」
「ブラール……!?」
カインの言葉に、アルの不安が大きくなる。
問題児であり、色々と悪い噂の絶えないブラール。
リースはそんなブラールに、いつも冷たい態度をとっていた。
プライドの高いブラールだけに、それを根に持ってリースに危害を加えるということは充分考えられることであった。
「あいつまさか……。くそっ!」
「わっ! アル、待ってよー!」
胸にざわめく嫌な予感を振り払うように、アルは体育館に向かって走り出した。
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