84人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「いやん。ハル君、激しいのねぇ……。こういうの嫌いじゃ無いわよ? でも……」
ずずいっと、シェリスがハルの目の前に顔を近づける。
ちょこんと覗いた八重歯がキラリと光った。
「……あんまりナメないで貰えるかな? 私を屈服させようなんて、10年早いわよ」
「いっ……!」
笑顔の消えた瞳から放たれた圧倒的な冷たさに、ハルの背筋が凍りつく。
口ごもって何も言えないハルに対して、シェリスがふっと表情を綻ばせた。
「お姉ちゃんが心配なのは良く分かったけど、子供はとっととお家に帰りなさい? 本物の侵入者に出会ったら、殺されてたかもよ?」
諭すようなシェリスの言葉に、ハルがブスッとした表情で俯いた。
「大丈夫大丈夫♪ 私だって君のお姉ちゃんには、さっさと帰って欲しいんだから。何とかして追い返すから期待して待ってなさい」
「う……うん」
まだ煮え切らないハルを見て、シェリスがにんまり笑いながら浴槽を出る。
「一応、外はもう暗いしね。家まで送ってあげる」
シェリスが瞬時にゴシックドレスを纏い、ハルを誘う。
「こ、子供扱いすんなよ! 一人で帰れるってばよ!」
「はいはい。いいからいいから。じゃ、行くわよ。ハル君の家は知ってるから安心してね」
「えっ? うわあああ!」
喚くハルを捕まえて、シェリスが窓から飛び立つ。
星が瞬く夜空に、ハルの悲鳴が響き渡った。
最初のコメントを投稿しよう!