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「……洞窟内を熱湯が満たすまであと3時間。せいぜい、足掻くがいいですの」
洞窟の鍵をしっかりとポケットにしまいながら、閉じられた扉に向かってキャミィは呟いた。
「ハインケル家は誇り高き名家ですの。だからこそ次期当主たるお兄様が、いつまでも魔法生物ごときに依存している状況では困りますのよ」
キャミィが潮風に真っ赤な髪を揺らしながら、邪悪な笑みを浮かべる。
「ククリー。お前が何よりもお兄様を大事にし、ハインケル家のことを思っていたのは認めてやりますの。だからこそ、ハインケル家のために死ぬのは理……とも言えますのね」
そう言って、キャミィは踵を返した。
「……人形が一つ壊れるだけのことで、私が饒舌になる必要はありませんわね。じゃ、行きますの。さよなら、ククリー」
断罪の名を冠する洞窟で新たな罪を重ねた少女は、それがまるで罪ですら無いかのように、堂々たるステップで、学園までの道程を歩き始めのだった。
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