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「おはようございます。キャミィ様」
「おはようですの」
学園から程近い、緑が生い茂る丘で、教室に荷物を置いてきたキャミィと、ククリーが合流する。
近くにある海から吹き抜ける潮風が、草を揺らしながら駆け抜ける。
二人は揃って、その風に髪を揺らしていた。
「今日は災難なことがあったようですね」
ククリーの言葉に、キャミィが顔をしかめる。
「全くですの。あんな屈辱初めてですわ。ククリーとの約束が無ければ、あの場で首を切り落としてやりましたのに」
キャミィが、頬をぷくっと膨らませて腕を組む。
その瞬間、一際強い潮風が吹き、キャミィが慌ててスカートを押さえる。
そんな様子を見て、ククリーがくすりと笑った。
「お変わりありませんね、キャミィ様。数ヶ月も経てば、もう誰だか分からなくなってしまうかと心配しておりましたが、杞憂だったようですわ」
「それは大袈裟ですの」
対するキャミィも、小さな笑みを浮かべる。
他に誰も居ないこの場所はとても静かで、運ばれてくる潮騒のメロディが、二人の耳に心地よく響いた。
「それで、久しぶりに帰ってきたからこの辺りの案内をして欲しいという言い付けは理解致しておりますが、具体的に、私はどこをご案内すれば……」
「海。少し海辺を歩きたいですわ」
ククリーの言葉を遮って放たれたキャミィの依頼に、ククリーは微笑みを浮かべた。
「はい。承りました。なるべく授業に遅れない程度にご案内致しましょう」
穏やかに紡がれたククリーの言葉に、キャミィがしっかりと頷いた。
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