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「ママ!? 大丈夫!?」
血を流す母親の下へと駆け寄るレイム。
母親はそれを見て、むりやり笑顔を作った。
「……大丈夫よ。いつものことだから……」
傷を押さえて言う母親を、心配そうに見つめるレイムの耳に、聞きなれた――しかし最も聞きたくなかった声が飛び込んできた。
「おう、レイム! 帰ったのか!」
「パパ……!」
奥の部屋から、大柄だが引き締まった身体を持つ中年男性が現れる。
父親であるはずのその男を、レイムは瞳をナイフのように鋭く尖らせて睨み付けていた。
「また……またママにひどいことしたの!?」
「こいつ、俺に内緒のまま盛り場で働いてやがったんだ。だからちょいとお仕置きをな」
「それはパパが全然働こうとしないからでしょ!? ママ一人に苦労させて……」
「うるせえ!」
怒声と共に、父親の拳がレイムの腹に突き刺さる。
「かはっ……!」
鈍重な痛みが腹部を走り、レイムは堪らずうずくまった。
「ガキが! 俺に楯突いてるんじゃねえ!」
苦しそうにうずくまるレイムに、容赦の無い怒声が浴びせかけられた。
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