リースのお色気大作戦

12/13
前へ
/39ページ
次へ
  「な、なによ! 私だって……私だって……」 リースに言い返そうとしたシェリスが言い淀む。 その様子を見て、リースが更に苛立ちを露にした。 「言いなさいよ!! 言わないと誰もアンタを理解できないのよ! 私だってアンタを理解してあげたいよ! でも、悪いけど今の状態じゃアンタに対して憎しみしか沸かない。黙ってて心配して貰えるなんて、そんな甘い話あるわけ無いでしょ!? ねえ、シェリス……。お願いだから、私を納得させてよ……」 捲し立てたリースが、まるで懇願するように、シェリスに答えを求める。 リースはただ、理由が欲しいだけだった。 いきなり現れて、身の回りを引っ掻き回すシェリスに、嘘でもなんでもいいから、もっともらしい理由を話して欲しかった。 リースも当然、シェリスが何かを抱えてることは気付いている。 だが、だからと言って、アルのようにシェリスの事情を知らぬままに優しくできるほど、リースはお人好しではなかった。 だから、事情をしっかり聞いて、シェリスに歩み寄るきっかけを作りたかった。 しかし、シェリスは結局、その想いに応えることは無かった。 「……アンタには……関係無いでしょ」 明らかに無理して放たれたシェリスの言葉。 しかしその言葉は、リースがすがっていた最後の蜘蛛の糸を、簡単に切って落としてしまった。 がくりと腰を落とし、床に座り込むリース。 虚ろなその瞳からは、涙が溢れ出していた。  
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加