リースのお色気大作戦

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  「……結局、何も言ってくれないんだ」 ただ何もない空間へと投げ掛けるように放たれたリースの言葉に、アルとシェリスは言葉を返すことができなかった。 零れ落ちる涙の音までが響いてしまいそうな静寂の中、リースはゆっくりと言葉を続けた。 「じゃあ……なんでアルを惑わすの? アルはずっとずっと頑張ってたのに……なんで今になってまた引っ掻き回すの……? 本当にアルを想ってるなら、魔力だけ渡して黙ってればいいじゃない。支えてあげるだけでいいじゃない。なんでまた、アルを苦しめるのよ……。私はただ……私はただ……」 虚ろな瞳を悲痛の色が染め上げる。 苛立ち、失望……溢れ出した感情を解き放つように、リースが大きく声をあげた。 「……私はただ、アルに心から笑って欲しいだけなのに! 自分が一番辛い思いをしてるのにずっと私を気遣って笑ってくれてたアルを知ってるんだもん! だから……アルに心から……心から……」 もう最後は、涙で言葉にならなかった。 流れ落ちる涙を手でぬぐいながら、リースがよろよろと立ち上がり、そのままアル達に背を向けた。 「……もうやだ……ごめん、部屋帰る……」 絞り出すようなリースの言葉に、返答できる者はいない。 とぼとぼと去っていくリースを、二人はただ黙って見つめていた。  
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