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「……レイム、私は大丈夫だから……パパに謝りなさい」
母親が、レイムの背をさすりながら優しく言う。
自身の傷もいたむだろうに、娘が更なる加虐を受けぬよう、真っ先に気遣ってくれる母の姿に、レイムは小さくうなずいた。
「……パパ、ごめん……なさい」
「よし、分かればいいんだ。俺はこいつと話があるから、お前はもう部屋に戻ってろ」
「……はい」
レイムは絞り出すような声で返事をすると、そのまま立ち上がり、階段を駆け上がる。
「……ごめんね……ごめんね、ママ……」
一度も振り向くことなく、二階の自室へ飛び込んだレイムは、ベッドに倒れこんで涙していた。
「私が弱いから……ママを守れない……。私が弱いから……」
階下では、依然として、父親の理不尽な暴力が振るわれているのだろう。
それを知りながら、何もできない自分が悔しかった。
「私、やっぱりダメなんだ……。リースの時も、アル君の時もすぐ近くに居たのに……。私じゃ何もできなかった……。今だって……今だって……」
灯りも点されていない暗い部屋に、レイムの嗚咽が響く。
開け放たれた窓から見える空では、既に月が輝いていた。
「力が欲しい……。ママを……みんなを……大切な人を守れる力が欲しい……! ……スーパーヒーローになりたい……」
「その願い、僕が叶えてあげよう」
「――っ!?」
不意に窓の方向から響いた声に、レイムは慌てて振り向いた。
そこには、窓の縁に腰掛け、ニッコリと笑みを浮かべながらレイムを見つめる、先ほどまではいなかったはずの金髪の少年の姿があった。
![image=297286299.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/297286299.jpg?width=800&format=jpg)
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