弱さゆえに

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  「はぁぅっ……!」 いきなり身体を包み込む感覚に、レイムが思わず甘い声を放つ。 光に包まれた身体は、空気の流れすら快感と感じるほどに敏感になり、レイムの脳を蕩けさせる。 そういったことには慣れているはずのレイムであっても、それは強烈だった。 「あははっ! レイムちゃん、頑張って!」 それを囃し立てるように、手を叩くシーク。 それを見て、レイムが羞恥に身をくねらせた。 「やあ……っ! 見ないでえっ!」 年齢に釣り合わず成熟した肉体を艶めかしく上気させ、熱い吐息を漏らすレイムは美しく、目を引いてしまうのは仕方がないとも言えた。 しかし、シークの態度はまるで違った。 性的な対象として見ているのではなく、まるで楽しんでいるかのような。 目の前で動くおもちゃを見ている子供のごとく無邪気な瞳は、恐ろしさすら感じさせた。 やがて、レイムの身体を襲っていた火照りが治まっていく。 同時に、レイムは自分の中に確かな異変を感じていた。 「何これ……。凄い、力がみなぎってくる……」 思わず自身の手を見つめ、感嘆の声をあげるレイムに、シークは笑顔を向けた。 「良かったね、レイムちゃん。まだ、二つ名持ちでもある君のお父さんには勝てないけど、修練さえ怠らなければ、いずれすぐに勝てるようになるよ」 「ありがとうございます!」 「お礼なんかいらないよ。じゃ、僕は行くね。それと――」 乳白色に輝く月を背に、開け放たれた窓に腰掛けながら、シークがゆっくりと最後の言葉を放った。 「〝与奪の魔導師〟――これが僕の二つ名だよ。これからはそう呼んでね。じゃーね!」 そしてシークは無邪気な笑みを残し、星の瞬く夜空に飛び立っていったのだった。  
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