カイン・リーブルの苦悩

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  「……カインよ。どうして黙っていた?」 薄暗く、埃の舞う道場で、カインは父親と対峙していた。 良く手入れされた髭に、鍛え上げられた肉体を持つ父親から発せられる威圧感は凄まじく、カインの額からは既に汗が滲んでいる。 二人の表情は険しく、ただ事では無いといった空気が漂っていた。 「隠してたわけじゃねえよ。言う必要が無いと思っただけだ」 「全ての出来事を報告しろと言ったはずだぞ」 「でも……」 「まさかお前、アルフレッドを本気で友人と思い始めたのではないだろうな」 「――ッ!?」 父親の言葉に、カインが表情を歪ませる。 図星であるのだと、一目で分かった。 「カインよ、忘れたのか? 貴族の弾圧により、命を失うことになったお前の弟と母のことを」 「……分かってるよ。でも、その元凶だったリーズブルグ家は滅んだじゃねえか! アルは落ちこぼれで、家から勘当みたいな扱いされてるんだ。なんでそんなアルを殺す必要があるんだよ!」 「ブラールに勝ったのだろう? アルフレッドは最早落ちこぼれではない。今はまだ平民に理解があるように見えるだろうが、力を持った貴族はすぐに豹変する。まだ警戒心の薄い今の内に、対処しておかなくてはならぬ。そう――貴族狩りとはそういうものなのだ」 父親の言葉を、カインは俯いたまま聞いていた。  
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