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「私さ……。父上に付いて徴税の様子を見に行ったことがあるの。素直に払ってくれる人も勿論いるけど、貧しい人達は必死で抵抗して、涙を流して……。私、そんな人が少しでも減ればいいなって。でも……」
「……ほら!」
ぼろぼろと涙を溢すリリーに、ブラールが不意にハンカチを差し出す。
面食らった様子のリリーを見て、ブラールは更に言葉を続けた。
「ほら! くれてやるって言ってるんだ! 泥だらけの顔で僕の横を歩くんじゃない! さっさと拭け!」
一気にまくし立て、リリーにハンカチを押しつけるブラール。
暫しの沈黙の後、ようやくリリーはハンカチを受け取り、微かに笑みを浮かべた。
「……ありがとう。ブーちゃん」
リリーは一言礼を言うと、ブラールのハンカチで自らの瞳を拭った。
「……リリー。僕には良く分からないが、理解などと言うものは、そんな一朝一夕で得られるものじゃないんじゃないか?」
「……えっ?」
「何十回も議論を重ねている僕達でさえ、お互いの事は理解しきれてない。だったら、庶民に理解されないのだって当然だ」
ブラールの言葉に、リリーは小さく頷いた。
「僕はお前の考えには全く賛同はできない。だが、わざわざお前の考えを否定するのは、今後は止めてやる。信念があるなら、根気よくやってみればいい。下等な庶民でも、いつかは理解すると思うぞ。まあ、せいぜい頑張れ」
「……うん。ありがとう、ブーちゃん」
ニッコリ笑うリリーと、ソッポを向くブラール。
そんな二人の様子を、ククリーは笑顔のまま見つめていた。
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