鮮血の記憶

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  ――その事件をきっかけに、二人の喧嘩は少なくなり、いがみ合うことも無くなった。 相手をむりやり自分に合わせようとしなくなったことは、お互いを尊重するということに繋がったらしい。 今やブラールとリリーは、無二の親友となっていた。 毎日のように会って、元気に遊び回る二人。 そんな楽しい日々を過ごす二人に、リリーの七歳の誕生日が訪れた。 「あっ、ブーちゃん! こっちこっち!」 白を基調とした、洒落た造りの屋敷の中に、リリーの声が響く。 大理石の床には、真っ赤なカーペットが敷かれ、左右の壁を大きく四角に切り取ったようなガラス窓からは豊かな緑が顔を覗かせ、木漏れ日が屋敷内を明るく照らし出していた。 「ほら、ブーちゃん! ここだよ!」 声の主を探してキョロキョロと辺りを見回すブラールの前に、今日の主役が姿を現した。 「じゃーん! どう、似合う?」 不意に現れたリリーの姿に、ブラールは思わず絶句していた。 リリーの身体を包み込むのは、まるでウェディングを思わせるような純白のロングドレス。 それは今までの快活なイメージから遠く離れた、神々しさすら感じさせるものだった。 そして、普段は下ろしているロングヘアも、今日ばかりは丁寧にアップされており、その輝くような黒髪は、きらびやかなアクセサリーで彩られ、陽光を反射し、キラキラと輝いている。 あまりに美しく変身したリリーの姿に、ブラールは暫く何の言葉も発することができなかった。  
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