鮮血の記憶

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  「それにしても〝洗礼の雫〟を見るのは初めてだから楽しみだなあ」 「……洗礼の雫?」 リリーの口から飛び出した聞き慣れない言葉に、ブラールは思わず問いかけた。 「あ、ブーちゃんは知らないんだ。リーズブルグ家に伝わる宝石……いわば家宝だね。普段は厳重に保管されてて、誰も触れることはできないんだけど、一族の人が結婚したり、これから一生添い遂げようって人ができた時には、この宝石の前で愛を誓い合うのがしきたりなんだって」 「あ、愛……!?」 何やら慌てた様子で口ごもるブラールに、リリーはクスクスと笑った。 「えー。せっかく私はOKなのに、ブーちゃんは私じゃ不満なのかな? こーんな美少女と巡り会う機会なんて二度とないと思いますよ、ねえお客さん」 「調子に乗るな!」 茶化すように言うリリーに、ブラールが顔を真っ赤にして返す。 それを見たリリーは、なおも悪戯ぽい笑みを崩さぬまま、言葉を続けた。 「ちなみに、誓いのキスもあるみたいだから、きちんと準備しといてよぉ? 歯になんか挟まってたりしたら、その場でひっぱたいて恥かかせてやるから」 「キ、キス!? は、ははは! あ、安心しろ! 僕はそんなヘマはしない! は、ははは!」 いきなり飛び出した衝撃ワードに目をグルグル回して狼狽えるブラールだった。  
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