鮮血の記憶

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  「あ、そういえばブーちゃんはどんなプレゼントくれるんだろ。楽しみにしてるからねえ♪」 ――ぴきっ リリーの言葉に、ブラールの表情が引きつった。 「ん? どうしたのブーちゃん。……まさか、大事な許嫁の誕生日にプレゼントを用意してないとか……」 「ば、馬鹿な! 僕がそんなヘマをするわけ無いじゃないか! ハインケル家の御曹司らしく、愛と感動とスリルショックサスペンスなプレゼントを用意しているよ。ハハハハハー」 乾いた笑いを浮かべるブラールに、リリーは敢えて追求せずに笑みを返した。 「うん。楽しみにしてるよ! じゃ、私はもう少し準備があるからまたあとでね!」 そう言ってパタパタと走り去っていくリリーを見送ると、ブラールはパウダーブルーに染まった顔をククリーに向け、声を潜めて言葉を紡ぎだした。 「……ククリー、どうしよう。プレゼントを家に忘れてきた」 「あら、それは大変でございますわ! 私が取りに行って参りましょう」 「ん。待ちなさい」 慌てて駆け出そうとするククリーを呼び止めたのは、レギンスールだった。 「まだ時間はある。せっかくだから、私とブラールで行くよ。ブルマールとキャミィの様子も気になるからね」 「あ、そうでございますわね」 レギンスールの提案に、ククリーが頷いた。 ブラールの母であるブルマールは元々身体が弱い上に、先日キャミィを産んだばかりということもあって、ククリーも気にかけていたのだ。 「ククリー君はリリーちゃんと二人で話したことはないだろう? 女同士だから話せることもある。我々が戻るまでの間、リリーちゃんの話し相手になってて欲しい。頼むよ」 「はい、旦那様。了解ですわ」 笑顔で会釈するレギンスールと、未だに真っ青な顔をしたブラールを、ククリーは一礼して見送った。  
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