鮮血の記憶

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  「お待たせーっ!」 「お帰りなさいませ。素敵になりましたね」 暫くして戻って来たリリーに、ククリーが笑顔を向ける。 リリーの唇には、真っ赤なルージュが施されていた。 「ありがとう! あれ? ブーちゃんとおじ様は?」 「お二人はブルマール様の様子を確認しに、一旦お家へ戻られました。パーティーの時間までには来ると思いますよ」 「そっかあ……。ま、仕方ないね」 そう言うと、リリーが何やらソワソワした様子で、辺りを見回し始める。 「どうしました?」 ククリーからの問いを受けたリリーは、辺りに誰も居ないのを確認したのか、声を潜めてククリーに話しかけた。 「……ね、ねえ、ククリーさんはキスってしたことある?」 「はい? い、いえ。ございませんが……」 いきなり繰り出された突拍子も無い質問に、ククリーが少し狼狽える。 そんなククリーをそのままに、リリーは腕組みをして考え込んだ。 「そっかあ……。あ、いや、今日さ、ブ、ブーちゃんとキスするって話だからさっ! や、やっぱり年上の私がリードしなくちゃなって! あれ、入射角とかどうなのかな? 何秒くらいキープすればいいのかな? うーん……」 唸って試行錯誤するリリーの姿は、ブラールの前では決して見せないものだった。  
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