鮮血の記憶

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  しかし、そんなククリーの思惑は外れた。 裏口を開けると、そこには大勢の侵入者が、まるで二人を待ち構えていたかのように並んで立っていたのである。 「来たぞ!」 「リーズブルグの娘だ!」 「殺せ!」 「リーズブルグの血を根絶やしにしろ!」 次々と浴びせかけられる罵声に、リリーの身体が小刻みに震える。 目の前に並んでいるのは、庶民と思われる集団。 恐らく、レジスタンスのような活動をしていた連中なのであろう。体制に抗う強い意志が、瞳から見受けられる。 しかし、こういう連中が、こんなに派手に行動したことは、ここ最近では無かった。何者かに焚き付けられて、リーズブルグ家に攻撃の矛先を向けたような、そんな風に思えた。 「リリー様。私の後ろに隠れて下さい」 リリーが真っ青な顔で頷き、ククリーの背後で小さく身を縮こませる。 それを確認し、ククリーは自分のポケットを探った。 「殺せ!」 一人の男が雄叫びをあげると、それに呼応して一斉に集団が動き出す。 魔法を放とうとする者、武器を振りかざす者。 とぐろを巻いて立ち上る殺気に、それでもククリーは一歩も退かなかった。 「……あなた達にかける時間は御座いません。運が悪い方は命を落とすかも知れませんが、悪しからずご了承下さいね」 感情をぶつける庶民達とは対照的に、恐ろしいほどに冷たく、静かな声で返すククリー。 しかしその瞳には、確かに怒りの色が浮かんでいた。  
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