鮮血の記憶

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  濃密な血の香りが、空間を支配した。 ――皆殺し。愚かなる革命家達に対してククリーが出した答えは、かくも非情だった。 もはやピクリとも動かない男達に背を向けると、ククリーは手の平の血を丁寧にハンカチで拭き取って、ゆっくりとリリーに近付いた。 「リリー様、終わりましたわ。さ、行きま……」 「こ、来ないで!!」 不意に放たれた拒絶の声に、ククリーがきょとんとした表情を見せる。 「な、なんでこんなこと……っ! こんな沢山の人を顔色一つ変えずに殺しちゃうなんて……こんなのククリーさんじゃないよっ!! なんで……なんで……」 歯を鳴らして震えながら、恐怖に彩られた表情でまくし立てるリリーを、ククリーはそっと撫でた。 「リリー様は本当にお優しいのですね……。ただ、こんなことは言いたくないのですが、暴力には暴力でしか抗えないことも、時にはあるのですよ」 「そんなの信じない! それじゃ戦争だよ! 誰だって、きっと話せば分かってくれるはずだもん。最初は理解されなくても、きっと分かってくれるはずだもん」 涙ながらに訴えるリリーに、ククリーは優しく微笑んだ。 「そうですね、リリー様。その気持ちをずっと忘れないで下さいませ」 そこまで言うと、ククリーはゆっくりと辺りを見回した。 「ただ、今は緊急でございます。私を嫌いになったのは仕方ありませんが、ブラール様のためにも、今は生き延びましょう。糾弾なら、あとでいくらでも受けます。しかし、リリー様とブラール様には、幸せになって欲しいのですよ。お願いします」 深々と頭を下げるククリーに、リリーはおずおずと頷いた。  
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