鮮血の記憶

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  「しまっ……!」 「つーかまえたっ♪」 触手が次々とククリーに巻き付き、四肢を拘束する。 それを見た少女は勝ち誇った笑みを浮かべた。 しかし―― ――ぶちぶちぃっ!! 「いっ……!?」 ククリーは顔色一つ変えずに、四肢を拘束する触手を引きちぎったのだ。 絶対の自信を孕んだ表情が、大きく歪む。 ククリーは絡み付いていた触手を乱雑に放ると、魔族の少女から視線を外さぬまま、口を開いた。 「リリー様。結界を張って大人しくしていて下さい。すぐに終わらせます」 「う、うん。隔離世界――アブソリュート・フィールド――」 リリーは小さく頷き、自身の周りに結界を張り巡らす。 恐らく目の前の少女には、この結界を破壊することなど造作もないことだと思われたが、時間稼ぎくらいにはなるだろうと、ククリーは踏んでいた。 絶え間無く攻撃を続け、結界を破る間隙を与えなければ良いのだ。 そこまで思考し、ククリーはスカートをたくし上げ、太ももに隠していた短刀を構える。 ――しかし、その悲劇は背後から訪れたのだった。  
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