鮮血の記憶

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  それから、二人は共に行動するようになった。 元々、貴族という立場上、腹を割って話せる友達というものが少なかったブラールにとって、ククリーは無機質な日々に彩りを添える花のような存在だったのだ。 ククリーと一緒にいる時のブラールは、わがままであったり、強がりを言いながら甘えてみたり、人生で最も子供らしい日々を過ごしていた。 そんな、風のように早く流れ行く日々が続いたある日、照りつける真夏の太陽の下を、二人は海へと向かって歩いていた。 「なんだ今日は……いやに暑いじゃないか」 「それはそうですよ。夏ですからね。だからこそ、海が気持ちいいのでございましょう?」 暑さにへばって歩みを遅くするブラールに、着こんだ水着の上にメイド服という激アツファッションのククリーが返す。 確かにこの日の暑さは凄まじいものであり、大地からはモヤモヤと陽炎が立ち上っていた。 「あー! もうダメだ! 僕は喉が渇いたぞ! もう一歩も動けん!」 「ブラール様、あと少しですから……」 「やだ! ククリー、おんぶしろ!」 駄々をこねるブラールに、困り果てるククリー。 しかし次の瞬間、ブラールが何やら目を輝かせて、急に走り出す。 見ると、その先にはブラールと同年代くらいの庶民の少年が、手にジュースを持って歩いていた。  
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