鮮血の記憶

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  「おい、そこの貴様! それを僕によこせ!」 「ちょ……ブラール様!」 「黙っていろ、ククリー」 見ず知らずの少年に対して、いきなり恐喝をかますブラールをククリーが制するも、ブラールは聞く耳を持たない。 いきなりのことに警戒する少年に、ブラールは更に言葉を続けた。 「なんだ貴様、僕はハインケル家の御曹司、ブラールだぞ! 分かったら大人しくそのジュースをよこすんだ!」 嫌がる少年にも、ハインケル家の名前は強烈だった。 すぐさまブラールにジュースを渡し、逃げるように走り去っていく。 ブラールはそれを、満足げに見つめていた。 「はっはっは! どうだククリー。これがハインケル家の力さ!」 「ブラール様……。このようなことにハインケル家の名を使っては……」 「ふん。下等な庶民などに何の気を使う必要がある。ククリーも、ハインケル家の一員として……」 「こらああああああ!!」 不意に、空気をつんざくような怒声が響き、二人が慌てて向き直る。 そこに見えた光景は、またもブラールと同じくらいの年齢の少女が、黒いロングヘアを揺らしながら猛ダッシュでこっちへ向かってきている姿だった。 「金持ってる貴族が、庶民にたかってんじゃなあああい!!」 「ぐぼぁぁっ!」 「ブ、ブラール様!!」 スカートが捲れるのも構わずに繰り出された少女の激しい飛び蹴りが、ブラールの顔面に見事にヒットする。 この少女こそが、リリー・リーズブルグ。 これが、二人の初めての出会いだった。  
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