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「なんなんだ! なんなんだアイツは!」
「まあまあ、ブラール様。あの件に関してはブラール様にも非はあったわけですし……」
「なんだククリー! 僕が悪いって言うのか!?」
その夜、自室でブラールは、ククリーに向かって愚痴を吐き散らしていた。
テーブルの上では、ククリーが丹精込めて焼き上げたクッキーが、赤髪の少年のやけ食いの犠牲となり、無惨に食い散らかされていた。
「それにしても、なんなんだあの女は! 貴族である僕の顔を足蹴にした挙句、せっかく手に入れたジュースを奪っていくとは!」
「きっと、元の持ち主に返しに行ったんですよ」
「そんなことは問題じゃない! もう怒ったぞ! あの女、次に会ったら……」
――ガチャリ
「ブラール。ちょっといいかな」
不意に扉が開き、顔を出したのは、ブラールの父親であるレギンスールだった。
「なんだよ父上! 僕は今ククリーと一緒にクッキーを食べてるんだ。邪魔をしないでくれ!」
「いや、お前に紹介したい人がいるんだ。同じくらいの年齢の女の子なんだけど、良かったら仲良くしてもらいたくてね。ほら、どうぞ」
ブラールの返事を待たずに、レギンスールが廊下で待っていたであろう誰かを手招きする。
そこに現れたのは、白いワンピースに身を包んだ少女で……
「あーっ! お前は朝の暴力女!」
「アンタは朝の恐喝野郎!」
それは因縁の再会になったのだった。
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