鮮血の記憶

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  「貴様ぁ……ここであったが百年目! 朝の恨みを晴らしてやるぞ!」 「何言ってんのよ! 大体、アンタがいけないんでしょーがっ! 来るなら来なさいよ! 返り討ちにしてやるわ!」 ゴゴゴゴゴゴ……と、周囲の空気が音を立てて振動し、二人の髪が逆立ち始める。 「ち、ちょっとやめなさい! 二人ともどうしたんだい!?」 いきなり始まったバトルに、レギンスールが制止の声をあげる。 その言葉を受け、魔力を抑える二人であったが、依然としてにらみ合いは続いていた。 「大体、よくものこのこと顔を出せたもんだな」 「アンタがここの家の人間だなんて知らなかったわよ!」 「あの庶民には名乗ったはずだが?」 「そんなの聞こえてないわよ。遠くから状況見てれば、何が起きてるか大体分かるし!」 「そんな適当な状態で蹴りをかましてきたのか!」 「あーもうっ! うるさいっ! とにかく――」 リリーが、びしいっ! と、ブラールを指差す。 そして、昂る感情を飾り立てることなく、剥き身のままでブラールにぶつけた。 「私は同じ貴族として、アンタみたいに出生で人を差別するようなのは大嫌いなの!」 「ふん! 庶民ごときにいちいち気を使うなど、貴族の名折れだ! 僕はお前みたいな偽善者が大嫌いなんだよ!」 睨み合う二人の姿に、レギンスールとククリーは向かい合って溜め息を吐くのだった。  
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