鮮血の記憶

7/37
前へ
/37ページ
次へ
  「で、他になにか反論はある?」 「うぐぐ……! と、ともかくだ! 庶民は下等で……」 「はい。反論になってない。今日も私の勝ちだね」 勝ち誇った顔でブラールを見つめるリリーに、悔しそうに歯噛みするブラール。 あの因縁の再会から一ヶ月。 あれからリリーとブラールは毎日のように顔を合わせ、お互いの主張について議論を交わしあっていた。 だが、怒りと偏見に任せたブラールの論はリリーには全く通じず、ブラールは毎日寝床でククリーに愚痴をこぼすのが日課となっていた。 「全く、ブーちゃんはいつになったら〝庶民の下等さ〟とやらについて私を納得させてくれるの? ねえ、ねえねえ」 「う、うるさい! それにその呼び方はやめろ! 馬鹿にされてるみたいで腹が立つ!」 「馬鹿にしてるんだけどー」 「貴様っ!」 「まあまあ、ブラール様」 激昂するブラールを、ククリーが優しく制する。 もはやこのやり取り自体が、彼等の日常となっていた。  
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加