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「ん? 何をしてるんだリリーは……」
ブラールが、前方に見えるリリーを眺めながら呟いた。
リリーは、何やらみすぼらしい格好の少年に、パンを差し出しているように見えた。
「ふん。相変わらずの偽善女だ。庶民に施しとはな」
悪態を吐くブラールに、苦笑いをするククリー。
しかし次の瞬間、二人の目に信じられない光景が映った。
「なっ……! 何をやってるんだあの庶民はッ!」
ブラールが、怒りに燃えた表情で駆け出す。
パンを差し出された少年が、リリーの顔に土を投げかけたのだ。
猛スピードでリリーの側まで駆け寄ったブラールは、そのまま少年の顔面に拳を打ち付けた。
「この、下等生物がぁッ!!」
「あぐっ!」
「……その声はブーちゃん!? 何してるの!?」
土が入り、開かない瞳を拭いながら、不意に聞こえた声に問いかけるリリー。
しかし、そんな声など、まるで聞こえないかのように、ブラールはうずくまる少年に追撃の蹴りを放った。
「貴様ッ! 何をしているんだ! 下等な庶民の分際で、貴族の顔に泥をかけるとは! この女が毎日どれほどの時間を費やして、貴様らのような下等な庶民のために思考を巡らせていると思っている! 無知、無能、無理解! だから僕は庶民が嫌いなんだ!」
「落ち着いて下さい! ブラール様!」
怒りに任せて少年に加虐を続けるブラールを、ククリーが制する。
息を切らしたブラールは、なおも怒りに満ちた瞳で少年を見据えていた。
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