アルとシェリスの悲しい過去

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  「アル君は、どうして私と契約しようと思ったの?」 二人が契約し、初めて迎えた夜。シェリスはアルの部屋のベッドに腰掛けたまま、少し離れた机で本を読むアルに問いかけた。 まだ六歳だというのに、アルの瞳は既に、世の中の全てを見てきたかのような様相を示しており、シェリスからすればどうにも気になって仕方ないのだった。 「それが運命なんだろ?」 パタンと本を閉じて、机に放る。 そしてアルは、そのままゆっくりとシェリスの隣に座った。 「父様と母様が言ってたんだ。俺は運命に従っていればいいって。そうすれば、いずれは全てが手に入るって。それに弟のイールは、ザルファーとかいう奴のせいで運命を変えられてしまった。だから俺には、それを修正してやる役目もあるしな」 「……優しいんだね、アル君は」 シェリスの言葉に、アルがあからさまに表情を歪める。 「優しくなんてない。だが、ザルファーとかいう奴がシャノカを連れ去ってしまったせいで、イールが毎日、父様や母様から言われもない暴力や暴言を受け続けてるのを見せつけられるのは、気分が良くないからな。それだけだ」 ふう、とため息を吐いてベッドに寝そべるアル。 シェリスはそれを微笑みながら見つめると、ベッドを立って伸びをする。 その瞬間、アルが読んでた本が不意に視界に入り、シェリスが目を丸くした。 「ふぇっ!?」 机の上に置いてあったその本は〝カレにおねだりするなら絶対にコレ! オシャレな香水と可愛いぬいぐるみ特集〟などという文句が表紙にデカデカと書かれた、女の子用情報誌だったのだ。  
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