アルとシェリスの悲しい過去

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  「アル君……これは?」 シェリスが思わず問いかけると、アルは慌てて本をしまった。 「ば……馬鹿! 見るんじゃない!」 顔を真っ赤にして本を隠すアルの表情は、先ほどまでのものとは違い、至って子供らしいものだった。 「ふふ~♪ アル君、誰かにプレゼントでも渡すのかな?」 シェリスがニヤニヤしながらからかうと、アルはいよいよ顔を真っ赤にする。 「な、なにを馬鹿な! 俺はお前と契約して、全てを手に入れるんだ。あんな奴と遊びたくなんかない! 俺は寝る!」 拗ねたように布団を被るアルを見て、シェリスはクスクスと笑った。 気丈に振る舞いながらも、本当は寂しくて仕方ないのであろうアルに対し、シェリスはなんだかんだで好感を持っていた。 しかし、アルの瞳の奥底で静かに燃える狂気の炎は、確実にアルの心を侵食し始めていたのだった。  
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