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「ねえアル君! 明日さ、あの子達に会いに行ってみない?」
シェリスの提案に、アルは一瞬シェリスに向き直るも、すぐさまその視線を虚空へ戻した。
「無理だよ。明日は昨日みたいに父上が出かける日じゃないんだ。父上の目を盗んで会いに行くなんて無理だ」
「それは私が何とかしてあげるわよ!」
「……それに、俺の顔は知れ渡っている。いきなり俺が会いに行ったとしても、向こうが萎縮してしまうだろ。そんなアイツは見たくない」
アルの言葉に、シェリスは黙り込む。
今、アルの口から放たれた感情はとても素直で、まがうことなき本心であることは伝わった。
本当はただ、笑いあって遊びたいだけなのに、自分の立場がそれを許してくれない苦痛。
そんなものを子供の内から味わっているアルの姿は、シェリスの目にはとても悲しく映った。
「大丈夫だよ、アル君! アル君から笑顔で話しかければ、絶対仲良くなれるって!」
不意に、シェリスがアルの背中をバンッと叩きながら、明るく言葉を発した。
悲しい運命に翻弄されたアルの前だからこそ、自分は底抜けに明るく、アルの背中を押してやらなければならない。
シェリスはそう感じていた。
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