アルとシェリスの悲しい過去

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  「さ、今のうち!」 次の日、シェリスに手を引かれ、アルは玄関へと急いでいた。 ちなみにアルの父親は、シェリスに幻覚を見せられ、何やら空気の入ったお嫁さんに対して偉そうに貴族の心得を説いている。 「さ、もう少しであの子達がいつも遊んでる広場につくよ。準備はおっけー!?」 「お……おっけー」 緊張からか、はたまたシェリスのテンションにあてられてか、ボソッと呟くように返事をするアルだったが、その手にはしっかりとリースへのプレゼントが握られていた。 不安と期待で震える足をむりやり動かして走り抜ければ、前方に見知った顔が二つ。 ボールをついて遊ぶ、リースとレイムだった。 「さ、頑張って! 私は陰から見守ってるわ」 「えっ!? あ、ああ、分かった」 不意に姿を隠すシェリスに、アルがひきつった笑みを返す。 目的の二人は、まだこちらに気づいていない。 むしろ気づいてくれたなら声もかけやすいのに、などと考えてしまう自分の両頬を叩いて活を入れる。 二人に近づく自分の腕と足が同時に出ていることに気がつく余裕など、アルには無い。 そして上擦った声を振り絞り、ついに二人に話しかけた。 「あ、あにょっ……!」 緊張のあまり、思いきり噛んでしまうアル。 そんな、ひどく不恰好な挨拶を、それでもシェリスは微笑ましく眺めていた。  
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