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「な、なにやってんのよ!」
異変に気付いたレイムが、アルを引き離そうと駆け寄る。
しかしアルは、無言のまま強風を巻き起こし、レイムにぶつけた。
「きゃああっ!」
まだ幼い小さな身体で強風に耐えられるはずもなく、レイムはそのまま数メートル吹き飛ばされ、大地に叩きつけられる。
痛みで立ち上がることができないレイムを一瞥することもなく、アルはリースへの加虐を続けた。
「ど、どうしたの、アル君!?」
あまりに理解の追いつかない光景に、シェリスも慌ててアルに駆け寄る。
「邪魔をするな……できそこないが……」
対するアルはまるで押し殺したような声を発し、シェリスを睨み付ける。
その言葉もその声も、もはやアルのものですら無いような気がした。
「どういう……まさか!」
シェリスの脳裏に、今の現状を理解し得る仮説が浮かび上がる。
だが、今はそれを気にしている場合では無かった。
何とかしてリースを助け出さなければならない。
――アルの身に住み着いた、邪悪な魔物から。
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