呪縛封印

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  「最初から疑問に思ってたのよね。封印という形で長い時を過ごしてきた私たちはともかく、ガラード家に代々受け継がれて力を蓄えていく呪いなんかあるのかって。なるほど、呪いなんかじゃなく、単純に私達と同じ魔法生物が、ひたすらガラード家の人間に取っ替え引っ替え憑依し続けてただけってわけね。ようやくボロを出したわね」 「別にボロを出したわけでは無い。隠す必要が無くなったというだけのことだ。既に我が力は極限まで高められているし、お前やシャノカも復活した。時は満ちたのだ。俺はアルを操って世界を我が手中に収める。それが、俺を作り出したマスターの願いなのだからな」 不敵に笑うアルに、シェリスが吐き捨てるように言葉を返した。 「あなたは可哀想ね。私と同じ魔法生物なのに、自分の意思で動くことさえ知らないんだから」 「黙れ! お前に何が分かる! 何百年もの間、ガラード家の人間に憑依し続け、ガラード一族の繁栄を助けながら少しずつ力を奪い、ようやくここまで力を蓄えたのだ! 全ては我を作り上げたマスターのため……ガラード一族の繁栄だけをただ願い続けたマスターのためにな!」 「ナンセンスね。アンタのマスターがいた頃とは、時代が変わったのよ。今は貴族と庶民の垣根も少しずつ無くなって、本当の意味で平等な世界が作られようとしてるの。アンタみたいな時代錯誤の独裁野郎に出番なんて無いわ!」 「黙れぇっ! いつの時代も、力は絶対的な意味を持つのだ! そのような生ぬるい世界は、俺の圧倒的な力で壊してくれる!」 アルの身体を借りた悪魔が、大きく咆哮する。 シェリスは小さく舌打ちをすると、大きく鎌を振り上げながら、勢いよく大地を蹴った。  
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