大いなる絶望と希望の欠片

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アルは一人、暗い牢獄の中で泣き叫んでいた。 鉄格子の隙間から、シェリスが、リースが、キャミィが、十字架に張り付けられ、アルに助けを求めているのが見える。 いくら叫んでも、アルの声は届かない。 助けに向かいたいのに、重い鉄格子は開くことはない。 必死で自分を求める声に応えてやりたいのに。 自分の命なんか、いくら投げ打ってでも助けに向かいたいのに。 何もできない。誰も救えない。 手の届かない場所で自分の名を呼ぶ三人を見ていることしかできなかった。 ――やがて、三人の胸を漆黒の槍が刺し貫く。 目の前で、守るべき命が散らされていく。 アルの叫びは、想いは、決意は、結局誰にも届かない。何も救えない。 「あなたは所詮、何も出来ないおちこぼれなんですよ」 どこからか、シャノカの声が聞こえてくる。 あまりに重苦しい絶望の中で、アルはただただ自分の無力さに打ちひしがれていた。
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