魔王、滅するとき

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  「驚いたぜ……。まさか両腕を無くしても魔法を発動するなんてな」 仰向けに倒れるイールの首筋に銀の刃を宛がいつつ、アルが感嘆に近い言葉を漏らした。 「……負けたくなかったんだよ、絶対に」 対して、イールが返した答えは諦念の意に支配されたようであり、彼の深い絶望が容易に聞き取れた。 「どうしてだ……? どうしてお前はここまで一人にこだわるんだ? 何で仲間の大切さを認めようとしないんだ?」 アルの言葉に、イールは一瞬だけ口ごもる。 しかし、全てを悟ったようため息を風に流すと、ゆっくりとその口を開いた。 「シャノカに……シャノカに見せ付けてやりたかったんだ。僕は一人でも強くなれるぞって……! 仲間なんか、僕には必要ないんだって……!」 その言葉に、アルは理解した。 イールは、自分達と戦っていたわけではない。 先立ったシャノカと戦っていたのだと言うことに。
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