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「そんなへっぴり腰で剣が扱えると思っているのか、アルフレッド!」
休日の早朝。本来ならまだ眠っていたい時間に、アルは一振りの剣を懸命に振るっていた。
それを側で見守るのは、鈍色の鎧に身を包んだ女騎士アイアンメイデン。
長い時間を眠りに就き、ようやく目覚めた彼女は、リースの想い人であるアルに稽古をつけているのだ。
「ちょ、ちょっと休憩させてくれよ」
「何を言うか。実際の戦場で、疲れたからと言ってすぐに休憩ができるとでも思っているのか。貴様にはマスターを守るという大切な義務がある! その剣が体の一部となるまで、特訓を続けるのだ」
「そ、そんなこと言ったって……もう腕が……」
「まったく! 貧弱だな貴様は。ちょっと見せてみろ」
そう言って、アイアンメイデンがアルの腕を取り、抱きかかえるようにマッサージを始める。
「全く、普段から鍛錬を怠っているからこの程度で筋肉が動かなくなるのだ。おい、聞いてるのか?」
「え、あ、ああ!」
アイアンメイデンの問いかけに対して、帰ってきたのは心ここに非ずと言った返答。
訝しげに首をかしげるアイアンメイデンだが、すぐにあることに気付く.
そう、マッサージをしているアルの腕が、自らの胸に触れていることに。
「貴様……よもや我をいかがわしい視線で見ていたのではあるまいな」
「え、あ、いや! そうじゃねえよ! 腕が触れちゃったら、そりゃあいくら俺でも……」
その言葉だけで、すべてが伝わる。アイアンメイデンの銀色の刃が解き放たれ、アルの首元に突き付けられた。
「貴様……マスターやシェリスだけでは飽き足らず、我にまでその汚らしい性欲を向けるとはな……。覚悟しろ、一発で首を斬る!」
「ちょ、か、かんべんしてくれえええ!」
逃げ惑うアルを追いかけるアイアンメイデン。
こんな光景は、もはや珍しいものではなかった。
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