MISSION 卒業試験

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眼前に広がる荒野は、恐らく街であったのだろう面影を残している。吹く風は乾いている。ていうかむしろ砂っぽい。 「準備は良いですか?」 ショートヘアの人が神機を担ぎながら私の隣に立つ。 「はい、隊長。いつでも行けます」 私はそんな事を言わないと体が震え出してしまいそうだった。いつもは安全の元の訓練だったけど、今日は違う。本物のアラガミを相手にしなければならない。いくら隊長がいても、私は不安と緊張を振りほどくことはできない。 「緊張してますね?肩の力を抜きましょう」 隊長は、私の肩に手を置くと深呼吸を促すように自分が深呼吸を始める。私もそれに合わせて深呼吸。 「すー……はー……」 ……少し気持ちが落ち着いたかもしれない。 隊長は、こういった気遣いが凄くうまい。 「頑張ってください、イヴがこの任務を完遂すれば見事、5人目の特殊強襲部隊の隊員ですよ」 トウカ隊長はそう言うと手を離し、少し険しい……いや、真剣な眼差しになった。 「今回の討伐対象はオウガテイル1体。個体では然程強くありません。が、油断すれば死にます」 トウカ隊長は最後の部分を強調する。そう、死ぬ。私がヘマすれば私は死ぬ。 「はい。絶対に死ねませんから、油断なんてしません」 私は、自然と自分の長剣を握りしめる。 「それじゃあ、私がバックアップをしますがオウガテイルの討伐は1人で行ってください」 トウカ隊長がオウガテイルに手を出した時点で任務は強制終了、私は入隊できずまた訓練のし直し。 だが、そんな甘くない。下手すれば死ぬ。 「行きます!」 「はい!」 私は高台から跳び降り、索敵を開始した。 しばらく探索したが、なかなかオウガテイルは見つからない。 「ハーブは特に役に立つので、見つけたら辺りの状況が安全なら回収しちゃいましょう」 トウカ隊長はそう言いながらハーブを採取する。 「アラガミが全くいない……こんな世界になれば良いのに……」 そうボヤくと、トウカ隊長がクスリと笑う。 「イヴは、スゥみたいなことを言うね。あ、別に悪いってことじゃないですよ?」 小鳥遊スゥさん。特殊強襲部隊の隊員でありながら衛生班のエースでもある彼女は衛生班見習いにとって憧れの的だ。 綺麗で、誰にも優しくて、アラガミを倒す腕も一流。神は人に二物を与えず、なんて嘘だよと思っちゃう。
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