第二話

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 土方は言いたい事だけ言うと懐に片腕を突っ込んで去って行く。  それを秩は頬を抑えたまま茫然と見送った。  土方の姿が前方の角を曲がって消えた所で、秩の後ろに隠れていたゆきが泣き出した。 「おかあはん、あのおっさん怖い・・・」  土方の表情と物言いに内容など理解出来ていなだろうゆきにも、土方が厳しい人物だと言う事は伝わったようだった。 「ゆき、どもないどす。なんも怖い事はあらしまへん。  土方はんのしゃべる事は、間違っておりまへんから」  ゆきに目線を合わせて秩が言うと、本当かと言うようにゆきが首を傾げる。  秩は自分の右頬を人差し指でそっと撫でる。  其処には、小さいアバタが三つ固まってある。  それは小さな頃に罹った水泡の跡が残った物だ。  秩にはこのアバタが気になり、ついつい右頬を隠したり俯きがちなる癖があった。  その為に何時も陰気にみられたり大人しそうに見られがちで、実際の自分とは違う印象を持たれる事が常だった。  直したいと思ってはいるが、秩の中にある女心が邪魔をして中々上手くいかないのだ。 「ホンマどす」  首を傾げたままのゆきに秩が再度話し掛けると同時に、秩の後ろから盛大に笑う笑い声が聞こえてきた。 「ふっはは・・・」 「ヒッヒヒ」 「おっ、おっさんって・・・ ブッ」  三者三様の笑い声の主を見れば、大中小揃った三人組の男達であった。 「永倉はん、原田はんに、藤堂はんやおまへんか」  和尚が親しげにその三人組に声を掛けると、腹を抱えて笑ったまま頷いてみせた。  そしてその三人の中の一人は、秩も会った事のある人物だった。 「ごめんやす。原田はん、おなかん具合はようええのどすか?」  原田と呼ばれた大中小の大の男は、浅黒い肌に白い歯を覗かせてポンと腹を叩いて見せると 「秩ん所の薬は良く効くな。もう、大丈夫だ」  と言って、隣に居た中の男の肩を叩く。
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