1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ーーーーっ!!」
普通の人より高くて透き通っていた声が、割れたように響いた。
声の主は、どさりと音を立て崩れ落ちる。
足のあたりから赤い湖が出来上がっており、忌々しいほど明るい月の光が反射していた。
足を押さえ地面を這おうとしているが、力が入っていないのだろうか、ほんの少しも動けていなかった。
その間にも、赤い湖を作る元凶たちは、冷ややかな目で見下していた。
汚物を見るように。
弱者を嘲り笑うかのように。
まるで、ー自らが正義であると、誇示するかのように。
無常に、無表情に、無慈悲に。
それらは、無意識のうちにか、人形のように佇んでいた。
ー…兄さんー
「はぁ…ぅ…ぐ…っ」
綺麗な、全てを飲み込んでしまいそうな黒い髪は、風に揺れるだけで、動いてくれない。
同じ色の瞳は、赤く染まった足を見て、頬を濡らすだけ。
それを見ていた人形の1人が、胸元からサッと髪を出す。
「…麒、貴様の…方の…五木偽…殺…」
距離が遠すぎるためか、聞き取りづらかったが、それは人形たちがよく口にする通達の1つに違いなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!