第1章 リアル・ジャスティス

5/7
前へ
/10ページ
次へ
荒れ果ててはいるが、未だその原型を留めているこの工場は、思いの外広い。 従業員のためにと配慮されていたのか、はたまた労働基準法を無視したものだったのか、工場の北側は3階建ての宿泊施設だ。 2人部屋がずらりと並んでいて、全ての階に部屋が6つずつある。 2階と3階には、工場の南側の生産塔に繋がる渡り廊下がついており、生産塔と宿泊塔を行き来することが出来る。 この工場、なぜか庭が存在していて、木が向かい合うようにして工場を囲むように配置されている。 しかもご丁寧に、北側にはイチョウやみかんなどの食い物がなる木を、南側には桜や梅、楓などの外見の良い木が植えてあった。 何とも分かりやすい思考である。 この工場の気候条件に土壌の状態も良いため、水さえ撒けば、勝手になるのだから利用しない手はなかったのだろう。 その御利益に、俺たちも肖っているので、文句は言わない。 工場の生産塔の1階にまで下りると、奥のほうにある部品室に向かう。 「で、何かあったんだろ?」 猿が、ポケットに手を突っ込みながら歩いている。 その顔は、ニヤニヤというより、面白いものを見つけた少年のような顔だった。 図体(ずうたい)は、実年齢に似合わないほどでかいのに、心だけは年相応というべきか。 俺よりも顔1つ分高い猿を見上げながら、言う。 「…今日の新人訓練の監督役が、将校と中将クラスの奴がいた」 「…まじかよ」 .
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加