プロローグ

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 まさか、本当にこんな本が存在するとは思わなかった。  よくある学校の七不思議の枠だけに収まってるふざけた噂話の一つだと思っていた。  というか、誰もがそう思っていたに違いない。あまりにも現実離れしてるから。  だって――聞いて笑うなよ?  午前2時に図書室のとある古い本の1001ページを開いて14秒数えると、本の中に身体ごと吸い込まれてしまうって内容の七不思議だぜ? しかも「人喰い本」とか「呪いの本」とか言われてる。お~馬鹿馬鹿しい。  でもなぁ。なんでこうなるかな。  夜中、いつもの4人で学校に忍び込んで実践してみたら、まず、1001ページが空白だったことに驚いて、それでもって玉手箱開けたらうんちゃらかんちゃらって御伽話の世界と同じ匂いのする光景が、目の前にパーッと広がったのだ。  胸元をグッと何かに引っ張られるようにシャツが持ってかれて、うあぁぁぁ? とか思ってる間に頭丸ごと本の中に突っ込んじゃってる状態でさ……。  あれよあれよという間に、身体がすっぽりと本の中に引きずり込まれてしまってた。  七不思議の七つ目を一番馬鹿にしてたこの俺が――この千木良光一(ちぎらこういち)が、なんとまぁ現在、本の中にポツンと佇んでおります。  たった一人ぼっちで。  アイツ……ヨボヨボの年寄り本だったのに、あんな強烈な吸引力を持ち合わせていたとは驚きだ――とは冗談だけれども。
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