プロローグ

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 とにかく、現実を受け入れるまで、かなり長い間唖然としていた。  何にも考えられなくて、微かに「夢だ。夢だ。夢だ」と呟いた記憶もなくはないけれど、茫然自失の体とはこのことだと身に沁みて分かった。  気を確かに持って、天井に向かって大声で叫んでみたりした。  飛び跳ねてみたりした。床に耳をつけてみたり、口笛を吹いてみたりした。あまり動きたくはなかったから走り回ることはしなかった。  全ては無駄骨に終わったのだが……。  結局、どう足掻いてもダメだと開き直ってみたら、どうでも良くなってきた。 そう思ったら、本の中が涼しいのだと初めて気づいた。無風で、常に15度位に保ってる倉庫にいるような感じだ。  身体をグルッと回転させて辺りを眺めると、どうやら円形のようだと分かる。ちょっと白いモヤがかかってるけど、茶色い壁とその形は認識できた。  床は、赤紫っぽい色に、蜂の巣のようなハニカム構造が一面に黒い線で描かれている。  あとは――。  天井は、ちょっとモヤが濃くて見えない。  空気は、薄くも濃くもない。普通。  温度は、夏ということでこの涼しさは快適である。  ニオイは、何となくクレヨンに似ている。  音は、気味悪いくらいの無音。  あ、そう言えば。あと三人――海司と莉奈と桃香がいるはずだ。  こうやって見る限りでは姿も気配もないようだが、アイツらはまぬがれたのか? 強烈な吸引力に勝ったのか? それとも、どこか別の場所に落とされたのか? あ~あ。何だかよく分かんねぇけど、「早くここから出せやぁぁぁぁ!!!!」
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