第一章

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 どうやらこれは夢ではない。意識として「現実感」がハッキリとしているし、頬をツネったり髪を引っ張ったりすると、相当の痛みがある。  円形室内の中央。  俺は仰向けに寝てモヤのかかった天を見上げていた。  こうやっていれば、いずれ誰か来るだろうと思っているのだが、誰もやって来なかったらどうしよう。このまま飢え死にか?   それはゼッタイに嫌だ。一度も女の子と付き合ったことないまま死ぬなんて、そんなの耐えられない。何のためにこの世に生まれてきたのか……。  子孫を残すという人間の宿命を果たせないまま枯れ果てるとは、自分の運の悪さが憎たらしい。
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