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 急かす言葉と共に今度は舌先で耳の縁を舐められて、ひゃうって叫んで堪らずに返事をしていた。  「は、い」  「ん、よくできました」  そう言って何かをパチンと首の後ろで止めたかと思ったら、首に重みが少しかかった。鎖骨の下あたりになにかひんやりしたモノを感じて視線を下げると、ちぃくんの首元にいつも下がっているチェーンと同じものだと気が付く。    その先にあるのは、十字架じゃなくてクラウン……王冠だ。それもいい香りがする。  ――これ、カモミールだ!  「可愛い」  「気に入ってくれた?」  「うんっ。お揃い? だよね。嬉しい!」  へへへって笑うと、ちぃくんもにこりと笑顔を返してくれた。とても温かくて柔らかい笑顔に、さっきのにじり寄ってきた時の気迫は嘘かと思うほど優しい。  「指輪とか、流石にそれは重いだろうから。俺からことちゃんに一方的な予約の代わり」  「そんなことない。一方的じゃないよ、全然」  「そう? 無理矢理言わせてる自覚はあるけど」  ぺろりと舌を出して笑うちぃくんに、私もクスリと笑う。  わざと強引に迫ったのは、ちぃくんの優しさかなって、なんとなく思いながら。
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