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真理亜の言う事に全く覚えがなくて、動揺するのを抑え切れずに捲し立てるように質問をした。だって、なんか複雑だ。私の知らない所で、真理亜とちぃくんがやり取りしてるみたいで……そんなの、耐えられない。
せっかく浮上した気持ちが落ち込んでいくのを感じながら真理亜を見ると、真理亜は私を『ありえない』って言ってるのがありありと分かる顔で見つめていた。
「いつって。だから、偶然会った時だって。コトが創と話してる時に、コソっと聞かれたんだよ」
「ホントに?」
「本当に。って、あーもぉ! こんなことで涙まで浮かべないでよ」
そう言われながら、私の目元はぐいっと真理亜の手の甲で拭われた。なんか、私って馬鹿みたいに恥ずかしい子だなって思うと、顔が赤くなってきた。
友達の前で、私って何やってるんだろう……情けなさすぎて、自分に落ち込む。
「ちぃくん、聡先輩にいろいろ聞いてるみたい」
「会長に? 何を?」
「だからぁ。今の生徒会のことだって」
「なんで?」
そう尋ねた私を見て、真理亜は驚愕していた。なんて言うか、さっきの『ありえない!』って顔にプラスして、『コトって馬鹿なの?』って顔が言ってる。
その表情にムッとすると、真理亜は大げさなため息を吐いて椅子をテーブルの下に押し込んだ。もう帰るよ、の合図だ。
私も立ち上がって椅子を仕舞うと、向かい合った私にポツリと言った。
「琴莉」
「何?」
「とにかくさ。ちぃくんを信じてついていきなよ」
「何それ」
「あの人は……絶対にコトを裏切ったりしない人だって、私思うから」
真剣な目をしてそう言い切るのが、私じゃなくて真理亜だということが複雑だけれど、私は黙ってウンと頷いた。
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