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家に帰ってから服を着替えて、ドサリとベッドに倒れ込んだ。ゴロリと横を向くと、何だかちぃくんっぽい犬のヌイグルミ。目があって引き寄せるとギュッと抱きしめた。
「会いたい、なぁ……」
私の期末テストと、ちぃくんのレポート提出が重なって会えない日が続いている。今までだったら、一緒に勉強したりしていたはずなのに。それすらも、最近避けられていた。
――私と一緒にいるの、嫌?
そんな言葉が喉まで出かかって、ぐっと飲み込んだことも一回だけじゃない。
分かってる。真理亜が言うみたいに、ちぃくんが私を大事にしてくれてることは。だけど、私には分からないことがいっぱいありすぎて、それが私を不安にさせる。こんなこと思う私はダメなのかな――
そんなことを思っていたら、携帯電話が着信音を鳴り響かせた。突然耳元で響くメロディにアワアワしながら液晶画面を見ると、相手はずっと頭の中に居たちぃくん。
「も、もしもしっ!」
勢い良く受話ボタンを押して声を上げると、相手からは笑い声が聞こえてきた。
『クックッ。こんにちわ、ことちゃん』
「はいっ、こん、にちわ。です」
『どうしたの、ことちゃん。相変わらず可愛いね』
衒い(てらい)もなく可愛いなんて言われて、瞬時に赤面する。ちぃくんは、私の顔を赤くさせるのが得意だから困る。
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