654人が本棚に入れています
本棚に追加
「可愛くなんか、ないもん」
『ふはっ。じゃあ、そういうことにしとこうか』
「もー、ちぃくん!?」
電話に出ただけで笑われる私。
そんな自分が嫌になるのに、ちぃくんは気にもとめずにクツクツ笑っている。ついには苛立った私は、だんまりを決め込んだ。
すると、ひと仕切り笑い終えたらしいちぃくんが、伺うように私の名を呼ぶ声がする。でも……そんなにすぐに、折れてあげないんだからね!
『こーとり。何、不機嫌なの?』
「……」
『ごめんって。許してよ』
しおらしい態度へと軟化していくちぃくんに、すぐに負けそうになる。でも、今日の私はそう易易と折れなかった。だって、モヤモヤしまくってばかりで、自分に嫌悪しそうなくらい、ちぃくんに不満いっぱいだったから。
『ことちゃん、何でもいうこと聞くから、ね?』
それなのに、こんな一言ですぐにグラグラきちゃう。ちぃくんは、私のことなんて手のひらで転がすように簡単に操れるんだ、きっと……それを分かっているのに、私は抵抗するすべもなくて、呆気なく自分の決心も崩れた。
「絶対に、何でも?」
『うん、俺にできることなら』
「じゃあ――」
そう言いながら頭に浮かんだ言葉は、私の初めてをもらって、なんて恥ずかしい言葉だった。
ずっと頭の中にあって、それが私をグズグズにダメにしている。誕生日を過ぎたら、そんな言葉で私を縛ったのに、ちぃくんは未だにその縛りを解いてはくれない。
最初のコメントを投稿しよう!