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 「可愛くなんか、ないもん」  『ふはっ。じゃあ、そういうことにしとこうか』  「もー、ちぃくん!?」  電話に出ただけで笑われる私。  そんな自分が嫌になるのに、ちぃくんは気にもとめずにクツクツ笑っている。ついには苛立った私は、だんまりを決め込んだ。  すると、ひと仕切り笑い終えたらしいちぃくんが、伺うように私の名を呼ぶ声がする。でも……そんなにすぐに、折れてあげないんだからね!  『こーとり。何、不機嫌なの?』  「……」  『ごめんって。許してよ』  しおらしい態度へと軟化していくちぃくんに、すぐに負けそうになる。でも、今日の私はそう易易と折れなかった。だって、モヤモヤしまくってばかりで、自分に嫌悪しそうなくらい、ちぃくんに不満いっぱいだったから。  『ことちゃん、何でもいうこと聞くから、ね?』  それなのに、こんな一言ですぐにグラグラきちゃう。ちぃくんは、私のことなんて手のひらで転がすように簡単に操れるんだ、きっと……それを分かっているのに、私は抵抗するすべもなくて、呆気なく自分の決心も崩れた。  「絶対に、何でも?」  『うん、俺にできることなら』  「じゃあ――」  そう言いながら頭に浮かんだ言葉は、私の初めてをもらって、なんて恥ずかしい言葉だった。  ずっと頭の中にあって、それが私をグズグズにダメにしている。誕生日を過ぎたら、そんな言葉で私を縛ったのに、ちぃくんは未だにその縛りを解いてはくれない。
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