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「ちぃくん」
「何?」
微笑みながら私の呼びかけに答えてくれるちぃくんに手を伸ばすと、腕を首に巻き付けた。
少しだけ膝立ちになって同じ目線に身体を上げると、間近にあるちぃくんの眼鏡越しの瞳と目があう。
じっと私を見つめる瞳の強さにドキドキが止まらない。でも、言うって決めたから。
震えそうな両手を抑えてメガネを取り上げようと手をかけるけど、ちぃくんは邪魔しないでただ黙っている。勝手に取り上げると、外したメガネを左手に握りしめた。
そのまま見つめ合って、どぎまぎして落ち着かなくなって……息を吸ってから、一音一音をゆっくりと吐き出す。
「目、瞑って?」
途端に目の前の瞳が瞼で遮られて、私を映すものが消えた。メガネを握るのと反対の右手を伸ばすと、ちぃくんの頬に触れる。
少しだけ冷たくて、指先まで熱くなっている私には心地いい。
ゆっくりと顔を近づけると、ちぃくんの鼻先に自分の息がかかるのが分かる。
それでもそのままそっと近づいて、小さい声だけどはっきりと伝わるように言葉にした。
「千歳、大好きよ」
告げてから、ちぃくんの唇に自分の唇を重ねた。
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