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「琴莉さん、部屋の温度上げないでもらえますか?」
「あ、あげてない、上げてないから!」
「いちいちそういうの、反応するから顔が赤くなるんですよ」
「な、な……なってないっ」
「見てませんが、なってるでしょ」
言うだけ言いながら、工藤君はひたすらシャーペンを紙の上に走らせる。
頭のいい彼の所業を恨めしく思いながらも、私はむっとしながら持っていたペンを机に転がした。
――なんだって、私にだけこんなにきついのかな
生徒会の始まった当初から、私にだけ工藤くんは厳しい……悪いこと、何かしたのかも。
凹んで落ちていきそうな私の横で、モッカが少し冷たい声音で口を開いた。
「颯太。池波に当たるな」
「……」
「そーた」
「……はい」
中学の部活の後輩だと言う工藤君は、モッカが引っ張ってきて会計になった。
後輩とは思えないほど頭の切れる子で、私なんか先輩としての威厳なんてまるでない。それでいていつもけちょんけちょんだから――うーん、私って一体。
そんなことを思いながら、瞬時にモッカによって黙らされた工藤君を見つめた。
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